Research Areas
有機化学を用いることにより、自然の範疇を超えた多様な分子?反応を作り出すことができ、その結果、科学の発展や医療の進歩などに貢献することができます。例えば、ペプチド?タンパク質に人工的なエステル結合を導入した分子を合成することによって、アルツハイマー病の原因ペプチド(Review: Chem. Pharm. Bull. 2016)やインスリン(Angew. Chem. Int. Ed. 2010)を効率的に化学合成する手法を開発しました。他にも、Dアミノ酸、翻訳後修飾、蛍光ラベルなど、多様な化学構造をタンパク質の特定の位置に導入することができます(Angew . Chem. Int. Ed. 2008, J. Am. Chem. Soc. 2009など)。また、水中?中性?体温といった温和な条件下、酵素よりも効率的にペプチド結合を切断できる人工反応系を開発することもできました(Chem. Sci. 2014など)。さらに、生体内で、悪玉のアミロイドタンパク質を光酸素化できる人工触媒を開発し、神経変性疾患などに対する新たな治療戦略として研究を続けています(Angew. Chem. Int. Ed. 2014; Nature Chem. 2016; Chem 2018; J. Am. Chem. Soc. 2020; Sci. Adv. 2021など)。一方、我々はこれまで、X線結晶構造解析などにより、様々なタンパク質における原子レベルでの3D構造を解明しており、構造生物学にも高い専門性を有しています(J. Mol. Biol. 2013; IUCrJ 2018; FEBS J. 2020; IUCrJ 2020など)。このように、創造性に優れた有機化学を基盤として、ペプチド?タンパク質といった生体高分子を自在に改変することにより、新たな生命現象を同定するとともに、革新的な医薬分子や創薬手法の創出を目指しています。物理化学、生物学、医学など、様々な分野との協働的な取り組みを通して、独創的かつ重厚な研究成果を発信できればと思います。